花の旅・花の寺 全国各地の花めぐり

四季折々に美しい表情を見せる日本。 全国各地、花の咲く寺を巡って日本を再発見しませんか。

不埒者の寺社めぐり 吉祥院天満宮

商店街が好きだから、街灯から下がる吉祥院商店会と書かれた
のぼりにつられて通りを歩いたが、商店はほとんど見当たらない。
町並みは昭和の佇まいで、小さな食品店、クリーニング店などが
ポツリポツリとあるだけ。

人通りも少なく、町の活況は近くにあるイオン洛南店に
根こそぎ持っていかれたような印象。
しかし鳥居横の公園では沢山の子供達が遊んでいるし、
その反対側、これも昭和の建物、吉祥院保育園も現役。
子供が沢山いる町は元気だ。
町は古いが人の集まる場所がイオンに移動しただけ、
新旧共存で寂れてはいないようだ。




鳥居をくぐるとまず広場がある。
左の鳥居側への抜け道にもなっている公共スペース風で、
すでに境内なのだが、子供達はここも遊び場にしている。
神社で遊ぶ子供達という絵面は、いかにも昭和の風景だけど、
こういう神社は好感が持てる。
この広場もあえて盆踊りや祭り用に空けているのではなかろうか。

観光化した寺社はなにを勘違いするのか、お高くとまって、
ここから入るな、これは触るな、ここからは入場料を出せ、
と塀やら柵やらがあって、子供の遊び場どころか、
敷居の高いすかんたこ神社になるのが多い。

 境内に入ってすぐ右手に「征清の役 軍人記念の碑」の石碑。
征清とは日清戦争のことだが、軍人記念の碑だけでは鎮魂なのか
功績を讃えるのか何の碑かわからない。
勲一等公爵陸軍大将 山縣有朋の名が記されているが、
わかったところで軍人もすかんたこなので、そそくさと次に行く。


 本堂の手前右に社がひとつ、祀られているのは吉祥天。
天満宮だから祀るのは菅原道真のはずで、なんで吉祥天なのか、
と思えば、菅原家が祀っていたのが吉祥天だからだそうで、
菅公さんが祀ってはる神様やから一緒にという構成。
吉祥天を祀る吉祥院と菅公を祀る天満宮
だから吉祥院天満宮と言う。たぶん。

 天満宮の本体は対の石灯籠に続き、
狛牛、狛犬の間を抜け、石畳の奥にあった。
オツムがよくなりたい人に撫でられてピカピカになった
「なで牛」は各地の天満宮で見かけるが、
ここのは狛犬のように左右一対の狛牛。
天満宮は牛を神の使いとしているから、それはわかる。
次に狛犬。これもわかる。
次に白馬像が一体。神馬だ。これもわかる。
で、その隣にキティーちゃん…。

牛、犬、馬と、ここまでは神の使いとしてわかる。
猫の像のある神社もたまにはある。
しかし、あのサンリオのキティーちゃんである。
ピカピカだから撫でたらオツムがよくなる「なでキティ」なのだろうか…。
白馬の横でキティーちゃんは「キティーちゃんのお守りあります」
と声をあげて販促活動をしている。
これはわからん。

いっそ狛犬、狛牛に続いてキティちゃんも
狛キティちゃんにすれば良いのに。
日本全国でただ一つ、狛キティちゃんのいる神社。
人気を呼ぶと思うがな。
近在の子供もキティ神社とか言って喜ぶだろうに。
左に口を結んだ吽形(うんぎょう)キティ像、
右に開口の阿形(あぎょう)キティ像…
口を開けたキティちゃんではサンリオの許可がおりんか。
ま、境内も子供達の遊び場になっているように、
神社が町に根付いているという視点で見ればキティちゃんがいる
理由もわからなくはない。なんでもありか、とは思うが…。


 
本堂と思ったのは拝殿で、賽銭箱の向こうがわガラス越し、
ひとつ向こうの建物がそれだった。
拝殿裏側に回るも塀で囲んでみられない。
この神社のちょっとだけお高いところか。

仕方なしに、拝殿脇の絵馬を見物。
絵馬を見るのは面白い。
個人的な願い事を名前まで書いて、
あからさまに公表する気持ちはわからんけど…。
ツイッター、フェィスブックに通じるものがあるか。
少なくとも読む側の心理にはそれに近いものがある。
絵馬サイトを作れば流行るかもしれん。

「賢くなりますように、成績でトップになれますように、
品行方正になりますように、親孝行しますように」とある。
親孝行しますようにと願うなら、とっととしろ!
主語は誰なんだ日本語が怪しいぞ、とツッコミたくなるものや、
「○○先生が○○県にいってもカウンセリングを私と続けてくださいますように」
と女性が書いた絵馬には、カウンセラーに恋慕の情、臨床心理で言う
転移が見受けられ、まず彼女はそのことに自身で気付かなければ…なんて、
いらぬおせっかいを思い、ふと、もしや、
これは神社が面白い絵馬を意図的に一番上にかけているのではないか、
キティちゃんを置くような神社ならそれくらいするのでは、と思った。

(kenmin)